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エンジェル

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そういえば旅先で読もうと思ってて結局読めなかった本を家に帰ってから読み進んだら、これが面白いのなんのって。止められなくてぶっ続けで読みつづけること四時間半。退屈な飛行機で読むんだったっすよ。てなわけでエリザベス・テイラー『エンジェル』。
エリザベス・テイラーはあのエリザベス・テイラーでなくてイギリスの女性作家(1912〜1975)。この作品は1957年に発表。


どういう話かっつうと、

栄光と転落の悲喜劇
本国ではしばしばジェイン・オースティンと並び称される作家、エリザベス・テイラー。その本邦初紹介となる本作は、二つの大戦をまたぐ激動期のイギリスを舞台に、ある女流作家の栄光と転落を描いた傑作長篇である。
田舎町ノーリイの食料品屋の一人娘エンジェルは、退屈な毎日をやり過ごすために、「パラダイス・ハウス」という屋敷の物語を拵えている。そこは、叔母のロティが侍女として仕えている屋敷で、「エンジェル」という名前も、令嬢アンジェリカにあやかったものだった。
エンジェルは、想像力と自負を頼りに処女作を書き上げ、若くしてベストセラー作家として成功する。憧れのパラダイス・ハウスを買い取り、思い描いた人生を手にしたかに思えたが、運命の落とし穴は思わぬところにひそんでいた......。
主人公の虚栄心と自己愛、そこに隠された悲哀と孤独が、機知とユーモアたっぷりに描かれる。訳者の小谷野氏(あ、「もてない男」の先生だ)が惚れ込んだ一作。鬼才オゾン監督による映画化原作。 (Amazonより)

まあ、なんつうかこのエンジェルって人が徹底的に妄想と自己愛の世界に生きてる人で、”栄光と転落の悲喜劇”って作品の紹介にはあるけれど、ここまで自己愛が徹底してて、他の人と見えてる世界が違ってたら、私たちがみれば悲喜劇ではあるけれど、本人的には悲劇ってことはないんじゃないんじゃないかなと思いました。

エンジェルの作品はデビューする出版社の下読みが”笑いすぎて腹がよじれた””最高のパーティジョーク”と揶揄するくらいのたぶんハーレークィンロマンス並のトンデモ世俗小説なんだけど(うーん、古代ギリシャ舞台の小説にローマの神が登場するくらいだからもっとひどくて携帯小説グレードなのかも)なんだけど本人は自分で大文豪だと大真面目に思っていて、そのへんの世間とのズレの描写が意地悪ですごくイイんすよねー。

なんとなく読みながらこれってエンジェルが小説家としての絶頂を極めてそしてそこで彼女の性格ゆえに人生半ばくらいでどん底になってこれからまだ続くお先真っ暗の人生どうするよ、ってな暗示のかかった終わり方なのかなあ、と思ってたら、彼女が年老いて死ぬまできっちり最後まで書かれてたので、これまたじっくりエンジェルの人生とつきあえてよかったなあと本を閉じて思いましたわ。

でもほんとこれって喜劇ではあるけど悲劇じゃないよなあと思いました。だってエンジェルの老後ってちょっといいなあ、と。
ノーラとマーヴェル、血のつながらない年寄り三人での生活って(別に仲がいいわけでもないけど)不幸ではないと思いましたわ。

てなわけでオゾン監督の映画も見てみるか。でもあとがきによると、映画のほうはエンジェルの小説はトンデモ小説って設定じゃないらしいので、そこがこの小説のツボだと思うんだけど、どうなんだろう。


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