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パフューム ある人殺しの物語

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『パフューム ある人殺しの物語』観ました。
原作読んでる人多いと思うけど、とっても微妙〜な綱渡りをしてる感じで、でも、割といい感じで映画は進んでたと思いました。原作に敬意がすごくはらわれてると思ったです。前半の感じとかすごく好き。でも時々、その綱から落ちるときがあって、そこでちょっと笑ってしまうんだけど。
まず最初でちょっと笑ってしまったのが、初めてグルヌイユが作った香水を嗅いだ時のダスティン・ホフマンの頭の中に広がった匂いに喚起された幻想の映像。
誰やー、あのベタな女性はー?えー、本ってどんな感じだったかなあと家に帰って読み返してみるとびっくりちゃんと原作に忠実なのね。
本のときはなんも思わなかったのに映像になると笑ってしまうのはなんでだろう。不思議です。

(以下、原作から抜粋)

驚くべき芳香だった。パルディーニの目から発作的に涙があふれ出た。(略)
バルディーニは目を閉じた。美しい思い出がよみがえってくる。若いジュゼッペ・パルディーニがナポリの夜の公園を歩いている。かたわらに黒い巻き毛の女性がいる。窓近くにバラの茂み。夜風が吹いている。鳥がさえずる。港の居酒屋から、かすかに音楽が流れてくる。耳元でささやく声を聞いた。愛の告白を聞いた。全身にゾクッと陶酔が走り、毛穴の毛がいっせいに逆立つ。

で、やっぱり一番のトンデモシーンはクライマックスのあそこかな。おもいっきし、やってもうた感が炸裂みたいな。
でもそこもちゃんと原作に忠実な再現がされてるんすよね。その前に、(反転→)香水のふたを開けた瞬間、匂いに陶然とし崩れ落ちていく民衆の様子もベタなギャグみたいで笑えるんだけど(←反転)

(以下大ネタバレなので反転してます)原作↓


反転→ その結果恐るべき人殺し処刑の場が、途方もない乱痴気騒ぎへと移っていった。紀元前二世紀のローマ以来、この世についぞなかったはずの乱痴気騒ぎである。貞淑な女たちが奇怪な叫び声をあげて上衣を引きあけ、乳房をむきだしにした。裾をまくりあげて地面に倒れた。その白々とした裸身を前に、男たちはせわしなく視線を走らせ、手をわななかせながら充血して起立した腰のモノをズボンから引っ張り出して、何やらわまきつつ女たちにとびかかりさまざまな肢体、さまざまな組み合わせで交わりを始めた。(中略)
たちまちにして辺りの空気は汗と呻きに、叫びとすすり泣きにみちみちた。万余の人間獣の饗宴。地獄絵さながらの光景だった。
←反転

で、最後のシーンは話的にはトンデモなんだけど、映画でみるとそうでもなかったです。
このシーンよかったよ。ちょっとだけほんのちょっとだけ表現を原作とは変えてあるのね。

原作より抜粋
反転→ ともあれ人間のからだは丈夫にできていて、そうそう簡単には八つ裂きにできない。馬で四方にひっぱっても、なかなかちぎれないものである。そのためだろう、やがて短刀がひらめいた。突き刺して、えぐり取る。斧を持ち出すものがいた。肉きり包丁が関節にうち下され、音をたてて骨を砕いた。たちまち天使は三十片のかたまりに変わっていた。一味の全員にひとつづつ。手に収めて、あとずさり。つづいて喰らいついた。猛烈な食欲とともにかぶりついた。三十分後、ジャン・パティスト・グルヌイユは一筋もあまさず地上から消えうせていた。←反転


あ、そうそう、グルヌイユがとあることをするために布にべたべた塗ってたアブラ。あれは無造作に布に塗ってるんじゃなくて、あれでナニを巻いた時にどの部分がどこに来てどの部分がどういう形状になるかって綿密な計算の上にそれぞれのアブラの量が塗られてる、ってことを今回読み直して気づきました。

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