荊の城
というわけで『荊の城』読みました。
『半身』よりもずいぶんエンターテイメント系寄りの話作りになってて、長いけどとっても読みやすくてテンポいい話運びになってます。『半身』よりもより広い範囲の人に受け入れられそうな感じ。
『半身』は最後にどっかんと驚きのヤマがあるんだけど、これは途中でびっくーりなヤマ場が二三回あって、とにかく楽しませて退屈させないつくりになってます。
なんつっても老嬢と囚人が主人公の陰鬱な世界の『半身』と違って十七歳の女の子ふたりが主人公なので活気があって話しに勢いあります。
内容は(amazonより)
19世紀半ばのロンドン。17歳になる少女スウは、下町で掏摸(スリ)を生業として暮らしていた。そんな彼女に顔見知りの詐欺師がある計画を持ちかける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産をそっくり奪い取ろうというのだ。スウの役割は令嬢の新しい侍女。スウは迷いながらも、話にのることにするのだが…。
でもスウは騙そうとしてる令嬢と同い年でいつしかふたりの間に絆のようなものが産まれて・・・ってな感じになるんですけど、これがまた、ハイジとクララみたいな太陽の下に咲く二輪の可憐な花って感じでなく、湿地帯にひっそり咲く紫とブルーのツル花ってな感じで、周りの大人のどろどろとした欲望や人間の暗黒の部分に翻弄されてそれはそれはもうね、いろいろな目にあうわけですよ。
まあ、ふたりの飲み込まれる運命の波にわたしも一緒に乗っちゃって上下二巻、次が気になって気になっていっきに読んでしまいましたがな。
7・8時間の長旅のお供に持って行くと旅があっという間に感じられる本ですよ。
話はふたりが同い年ってとこがミソになんですよねー。
まあ、面白いので読んでみてください。
テレビドラマにもなってるみたいですね。コレ。
サラ・ウォーターズのインタヴューはここ。
あ、でもね、これもむちゃむちゃ面白かったけど、やっぱ好きなのは『半身』のほうなんですよねー。
どういう風にいえばいいのかな、『荊の城』がテレビっぽい感じで『半身』は映画っぽいっていうのかな。『荊の城』はストーリーを楽しみ、『半身』は心のヒダを顕微鏡でみて楽しむみたいな。